日本のごく一般的な一戸建ての寿命って、30年なんだそうだ。地震大国だからもっと頑丈な作りになっていそうな気もするのに意外だけれど。我が家は夫の年齢も年齢だし、私もガッツリ働く気がないので、安い中古物件を探そうと思っていたのだけど、寿命30年ということを聞いてしまって一気にそれも萎えてしまった。この先最低でもオリンピックを10回は見てやろうと意気込んでいるのに、先に家の方にダウンされては困ってしまう。

そう考えると私の祖母はすごい家に住んでいるのだなと思う。何せ築60年、リフォームはたびたびしているけれど、雨漏りもすごいし、建てつけが悪いのか窓からの隙間風もすごい。湿気がこもっていていつも黴臭く、子供たちと祖母の家に行くと、いつも帰る頃には全員がものすごい鼻声になっている。「泊まっていきんしゃい」という祖母の提案を、いつもやんわりと、しかしはっきりとお断りしている。

そんな祖母の家は冬になると異常に寒い。石油ストーブをガンガンつけているにも関わらず、それじゃ間に合わないくらい冷たい隙間風が忍び込んでくるからだ。だから毎年冬になると近所の八百屋さんから段ボールを貰ってきて窓にはめている。もう何十年もそんな冬を越しているせいか、窓に段ボールをはめる手つきも慣れたもので、その道があるならプロとして食べていけるんじゃないかというくらいである。だけどはっきりいって見栄えのいいものではないし、窓にはめるのはガラスだけにしようよ…と言いたいけれど、こたつに入って縮こまっている祖母を見ているとそれを忠告するのも憚られる。かと言って家の建て替えを持ち掛けても断固として受け入れない。今は亡き祖父の思い出が染みついたこの家で最後を迎えたいのだそうだ。そんな祖母の話を聞きながら鼻が詰まるのは、涙のせいなのかカビのせいなのかは、わからない。